2021年12月17日の午前10時すぎ、大阪北区の繁華街のビルで火災があり、沢山の被害者が出たことがニュースになっていた。
出火したのはその雑居ビル4階の心療内科とのことらしいが、そんなところで火事になるとは普通は考えない。病院では基本的に火を取り扱うことがないからだ。
となると出火の原因は放火となるわけだが、その動機がそのクリニックへの強い逆恨みもだとすればこれほど恐ろしいことはない。
これまでも似たような放火事件があったが、白昼に起きたものの多くは、加害者の恨みや抗議の表れが強いと言われている。
少し気になったので色々と調べてみた。
やば😱北新地で火事! pic.twitter.com/5L8K1hAuFM
— あつ (@ak_attsu) December 17, 2021
大阪キタの雑居ビル火災について
2021年12月17日午前10時20分ごろ、大阪北区の曽根崎新地一丁目の雑居ビル(8階建て)で火事があった。
燃えているのはビルの4階からで、そのフロアには心療内科「西梅田こころとからだのクリニック」があったとのこと。
お昼の時点では20数名が心肺停止など大きな怪我を負っていると報じられていた。その後、そのうちの25名が亡くなったと報道されている。
警察によりますと、50代~60代の男が火元とみられるビル4階のクリニックに紙袋を持参して訪れて、紙袋を蹴り飛ばし漏れた液体がストーブに引火したという目撃者の証言もあるということです。
出典:MBSニュース
出典:読売新聞
出火の原因はガソリンによる引火か?
ここで気になるのは出火の原因だが、事件から3日経った現在ではガソリンによる出火が濃厚だと言われている。
当時、警察は『30分という短時間で火が消し止められたこと』『多数の死者が出たこと』という事実から、放火の疑いなど事件性がないか調べたそうだ。
たしかに午前中の火災にしては被害が大きすぎたので、多くの人がそう思ったかもしれない。
今回の火災は、心療内科のようなクリニックで起こるものとは思えないし、20数名が心肺停止に陥るような火事となると、ちょっとした火の不始末から起きた火災とは考えにくいからだ。
となると、武富士や京アニ事件のような恨みによる放火と同じである。ガソリンによる放火は火の回るスピード、煙が充満するスピードが想像以上に速いと散々ニュースでやっていたので、逃げ遅れた人がこれほどまでに多いことも合点がいく。
ちなみに被害のほとんどは一酸化炭素中毒によるものだと報じられていた。
そもそも、雑居ビルというのは避難しにくいと言われている。築51年のビルだそうで、エレベーターの他に非常階段がひとつだけだった。
歌舞伎町の雑居ビルや広島県福山市のラブホテルの火災でも、なぜあそこまで被害者が多く出てしまったのかというと、単純に普段住んでいる場所ではないため避難経路がわからないから、という理由が挙げられていた。
それに人が多いと、伏せた状態で避難できない。避難のために集中する階段で渋滞を起こし、煙が撹拌されてしまって一酸化炭素中毒になるスピードが早まるとも聞いたことがある。実際、火事で煙が出ている時は、伏せて行動することが重要なのだそうだ。
そういう部分で、自宅の火事とは違って、不特定多数の人が集まる雑居ビルでの火事は被害者が多く出てしまうのだろう。
次に犯行の動機についてだが、場所が場所だけに「心の病に罹った人が放火したのではないか」「心療内科への恨みを持つ人の犯行ではないか」といった話も出てきてしまっている。
大阪の心肺停止者多数の火事、放火じゃないかな
この心療内科がよく燃えた場所らしいし
普通心療内科で自然に火がつくものなんてそうそう無いよな
口コミあんまり良く無いし…… pic.twitter.com/D85AeqV8Fk— S.harada (@nekomata2221) December 17, 2021
人間の良心というものを考えると、あまりそうは思いたくない。
が、兵庫県稲美市の伯父が引き起こしたような事件や京アニ事件などもあったので、その可能性は拭いきれない。
また、医師や看護師の多くが経験するモンスターペイシェント(迷惑な患者)問題というのも世の中にはある。
大阪ビル火災の病院のGoogleマップの口コミがひどいみたいな話が流れてますけど、調べたことがある人なら知っていると思いますが、診療内科の口コミはだいたいひどいです
つまり、お医者さんみんな苦労されているということです— 篠原修司 (@digimaga) December 17, 2021
ただ、人として事実がわかるまでは警察の捜査に任せたほうがいいのかなと思うが、出火場所が4階のクリニックの入り口付近であるということ、火の回り方が異常に速かったという理由から、すぐに放火の線で捜査も始まった。
大阪の心療内科で火事。早くも別垢では「精神がやばい人がやったんじゃない」って人多い。
心療内科=おかしいやつみたいな偏見未だすごいよね。
そんな偏見とも戦ってる人多い気がする。
火災現場には「働く人のこころとからだクリニック」と書いてあり、誰でもお世話になる可能性あると思うけどな。— ゆう@雑多垢 (@yuu2630mama) December 17, 2021
上記のような意見ももっともだが、ピンポイントで4階のクリニックから火が上がったところから、そこに火をつけるべき動機というものが何かしらあることは確かだろう。
無差別的にビルに火をつけるのであれば1階でもいいと考えられるし、わざわざその場所を狙って火をつける理由があったからこそ、そのクリニックで火災が起きたと考えてしまうからだ。
犯人は4階の心療内科に恨みがあった?
もし今回の火事を起こした人物がいるとしたら、その犯人は何者なのだろうか?
すでに警察により「西梅田こころとからだのクリニック」に通っていた61歳男性だと特定されているが、いったいどんな理由があってこのような凶行に及んだのか。
白昼堂々と放火に及んだところを見ると、相当強い思い込みや恨みを持っていたと考えられる。
それはとんだ『逆恨み』としか言えないが、だとしたら巻き込まれた24人の犠牲者とその家族はどうなるのか。
容疑者と思われる人物は救急隊に搬送され危険な状態らしいが、このまま生存したとして何をどうしても償える重さの罪ではない。
そして、心療内科へ強い恨みを持つというところでひとつ問題もある。
それは犯人が何らかの精神疾患を持っている可能性があるということ。
そうなると刑法39条が適用されるのかどうかも問題となってくる。
※刑法39条:心神喪失者・心神耗弱者の行為は減刑となる法律
もし仮に、クリニックへの恨みが全くなかったとすれば、かなりジョーカー的で、常人の理解を遥かに超えた犯行だ。
自宅に火をつけていた犯行に及んだという情報もあるので、いわゆる『無敵の人(人生を捨てた人間)』が他の人を道連れにしたとなれば、これはかなり深刻な社会問題となる。
というのも、日本は独身高齢者が増える社会へと進んでいるため、孤独を抱えた状態で危険思想へと走ってしまえばブレーキをかけてくれる人がいない分、同じように暴走する人間も出てくる可能性が高まるからだ。
実際、61歳男性も離婚し、親族とも長年連絡を取っていなかったという。
以下の記事のデータにもあるが、未婚・離別の新受刑者数が有配偶の倍数となっており、そのほとんどが男性となっている。
もちろん全ての人がそうなるわけではないが、ごく一部の人間が凶行を起こす社会になりつつあることは、我々も意識しておいたほうがいいだろう。
オタキングとして有名な岡田斗司夫が、「ジョーカーという映画は悪を拡散する悪のインフルエンサーの話である」と語っていた。
令和に入ってから、失うものがないと開き直ったかのような人間が様々な通り魔的事件を起こしている。
デール・カーネギーの名著『人を動かす』という本でも有名な話だが、悪人にも悪人の論理というものがある。曲がりなりにもその論理がネットやSNSでインフルエンスされれば、映画『ジョーカー』のようなことも実際に起きてしまうかもしれない。
将来に未来を見失う人が増え、社会がそれを自己責任だという風潮になればなるほど、連鎖的にこのような事件が起きないか不安を感じるところがある。
こんなツイートもあった。
北新地のビルの心療内科火災事件、昨日放火を匂わせてた人が居る模様… pic.twitter.com/ZikUcPi8kd
— ちゃんぷぅ🐼 (@Chan___Puu) December 17, 2021
……。
偶然だと思うが、前日にこのような書き込みが5chにあることは少々気味が悪い。今回の放火と無関係だとしても、潜在的にこのような思想を持ってる人がいつどこで何をやらかすかはきっかけ一つの問題のような気もするからだ。
ただ、たとえどんな理由があれ許されることではないし、犯人の動機に理解を示すことも絶対にないが、この人間の裁かれ方次第では模倣犯なども出てくる危険性も否めないので、国民が納得する形で厳罰に処さなければならないだろう。
(追記)
2021年12月30日、病院に搬送されて治療を受けていた容疑者の死亡が確認された。
雑居ビルの火災は逃げられない?
こういう火災ニュースが報道される度、雑居ビルの火災避難は難しいなと考えさせられる。
今回は延焼範囲が約25平方メートル(フロアは約95平方メートル)とあったが、間取りを見る限り、ひとつでも判断ミスがあれば(いや、そんな暇もないかもしれない)、簡単に命を落とすだろうなと想像してしまった。
大阪の火事…堂島北ビル…これでは逃げられないよね😭#大阪 #火事 #堂島 pic.twitter.com/Qx4166g8K3
— 坂井誠仁 (@masahito_sakai) December 17, 2021
ちなみに心療内科の内装はこんな感じだったようだ。
要は、窓がほとんどなく狭い空間なので、このような場所で大きな火災が起こった場合、煙がすぐに充満して一酸化炭素中毒を起こしてしまう、ということだ。一呼吸二呼吸煙を吸ってしまえば気絶し、そのまま心肺停止に至ってしまう。
この雑居ビル4階には給湯室はなく、ビルにガスが通ってなかったと報じられていたが、今回のように悪意を持って火をつけられたらひとたまりもないだろう。
放火された場所は4階のエレベーター前、入り口付近であり、放火の後、犯人は逃げ道を通せんぼしたと防犯カメラに映っていたというから恐ろしい。
フロアの構造上、こうなってしまえばもう逃げ場がない
狭い空間。狭い通路。たったひとつの避難経路。
屋上だって、今どきショッピングカートやコンクリートブロックを投げるバカモノがいるせいで施錠されていたかもしれないという条件も考えると、ここまで被害が大きくなったのは必然と言えよう。
年の瀬にこのような事件が起きてしまうのは悲しいことだが、雑居ビルでの火災リスクについて我々も改めて気をつけたい。
しかし、明確な悪意を持った放火については、正直対処のしようがないとも感じさせられた。まさに京アニ放火事件の時と同じく、戦慄が走る事件だ。
今回の雑居ビルの火災は、24名の死者が出るほどの大惨事となってしまった。亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。
そして、被害に遭われた方の回復を願いつつ、この不可解な火災を起こした犯人の動機、続報を待ちたいと思う。
事件の翌日、四つ橋筋を車で通った際の火災現場の様子。
犠牲者へ手向けられた沢山の献花が見られた。