神田沙也加の訃報が世間に衝撃を与え、しばらくしてどのテレビ局もパタッと神田沙也加に関する報道をしなくなった。
特に週刊文春が報じた遺書の内容にあった彼氏の存在などは、芸能ワイドショーが思い切り食いつきそうなネタだが、今回は柄にもなく空気を読みまくっている。
神田沙也加関連のニュースがテレビで報道されない理由は3つある。
- 後追い◯◯の阻止
- 遺族の心情に配慮
- 社会的バッシング回避
令和に入り、時代の価値観も大きく変わりつつあるが、今後は芸能人のこのような訃報についてあまり詳しく報道されないと考えたほうがいいだろう。
ということで、これからその理由について詳しく解説していこう。
なぜ神田沙也加のニュースはテレビで報道されないの?
神田沙也加がホテルの22階から14階に転落したニュースは世の中に大きな衝撃を与えたが、しばらくしたからその原因がなんだったのかは、どのメディアでも全く報道されなかった。
自死なのか、事故なのか、それとも悪意のある人間の仕業なのか、様々な憶測がネットで噂されたことは記憶に新しい。
そして、5日ほど経った後に発売された週刊文春によると、遺書とみられる書き置きがあり、その内容が一部明らかにされる。そこでようやく「神田沙也加がなぜ転落したのか?」に対する答えがわかってきた。
それに関しては、『文春砲で全ての謎が解けた』という記事で書いたとおりだ。
しかし、そこからパタッと神田沙也加関連のニュースをテレビで扱わなくなってしまった。
めざまし8に関しては、50分間も神田沙也加の特集をかました後、「一線を引いて、これ以上報じない」とMCの谷原章介が謝罪を交えて宣言した。
実際、テレビのワイドショーをザッピングする限り、神田沙也加の活躍を振り返る特集はするものの、転落について言及する報道はなかった。日曜日の午前中にやっているサンジャポやワイドナショーもスルーしていた。ちなみにアッコにおまかせでは取り扱っていたが、文春の内容にまでは切り込んでいない。
つまり、テレビで報道されているのは、神田沙也加の過去の芸能活動や、両親である松田聖子・神田正輝がどうだったとか当たり障りのない内容だけなのである。
おそらく、このまま神田沙也加の死の背景にあったことはテレビで報道されることはない。
その一番の理由を一口に言うと『社会的影響を抑えるため』なのだが、以下3つの理由を持って解説していきたいと思う。
- 後追い◯◯の阻止
- 遺族の心情に配慮
- 社会的バッシング回避
まずは一番大きな理由から説明していこう。
1. 後追い自殺の阻止
一番の理由はこれである。
これは厚生労働省からメディア関係者に向けたガイドラインにも記載されている。
著名人の自殺及びその可能性に触れる報道は、報じ方によっては「子供や若者、自殺念慮を抱えている人の自殺を誘発する可能性」があります。
『自殺報道ガイドライン』を踏まえた報道をお願いいたします。
出典:厚生労働省
つまり、芸能人など影響力のある人物の自殺は、その死でさえも大きな影響を与えることになるので、それを助長する報道をしてはならないということだ。
たとえば、『A』という女優がいて、その『A』をロールモデルとして生きている熱烈なファン(とりわけ子供や若者)がいた場合、『A』という存在が消えてしまった時に、その熱烈なファンも同じ道を辿ろうとするといった感じだ。
著名人の突然の訃報はショックな出来事だが、普段から熱烈な追っかけをしているファンからするとそれは胸に大きな穴が空くほど人生に影響を与える出来事となる。
実際、2020年に自殺した2人の芸能人(三浦春馬と竹内結子)の加熱報道を受けて、約10日ほどの間に約200人が後追いをした可能性があるというデータもある。
上記のデータでは月毎の自殺者数の推移がわかる。
赤い丸で囲われている部分で突出して自殺者が増えている。
どちらも先月に比べて200名以上増加していることが数字として出ているので、さすがに報道の在り方に問題があることを指摘されることは避けられない。
後追い自殺について、このようなデータが出ていることには驚きだ。
僕はX-JAPANのHIDEや尾崎豊の急死報道をリアルタイムで見てきた世代だが、あの頃は各局が加熱報道をしていた。微かな記憶によると、後追い自殺のことさえもニュースになっていた気がする。
尾崎豊が亡くなった年、僕は京都会館へ尾崎豊のフィルムコンサートに赴いた。そこには人目をはばからず泣いているファンが何人かいて驚いたことがある。大好きなアーティストの死は、ファンにとってそれだけ大きな喪失感を与えるのだ。
特に神田沙也加の場合、人気ディズニー作品『アナと雪の女王』の主役・アナの声優でもあったために、若い世代のファンも大勢いることが考えられる。それにミュージカルでも主演クラスの女優であることも考慮し、テレビという大きなメディアとして自殺に関する報道を控えるのは当然の配慮と言えるだろう。
2. 遺族の心情に配慮
神田沙也加の人生は35歳で幕を閉じることとなったが、誰よりも深い悲しみを抱いているのが遺族である。
特に両親は誰もが知る歌手・松田聖子と俳優・神田正輝でファンも多い。
そんな国民的有名人の子供として、神田沙也加は生まれた時から多くの人達にその成長を見守られてきたので、ある意味遺族のように悲しみに暮れている人も相当数いるということになる。
となると、心情的にはそっとしておいて欲しいのが当然だ。
特に公共の電波で各局が加熱報道となれば、不快に感じる人から反発を食らうことは容易に予測できる。
実際、葬儀の際に余計なインタビュアーの一言が炎上騒ぎにもなっている。
- 神田沙也加
- 神田正輝
- 松田聖子
それぞれに多くのファンがいて多くの関係者がいる。
特に松田聖子や神田正輝は大御所だ。
当然、ワイドショー関係者にもお世話になった人は多いので、芸能社会としてここで心情に配慮しない世界ではないということが考えられる。
3. 社会的バッシング回避
いま、テレビ局はコンプライアンスに厳しくなってきており、視聴者もそこにはかなり厳しく目を光らせている。
先ほども伝えた通り、神田沙也加、神田正輝、松田聖子にはファンも多く、今回のようなデリケートなニュースにおいては心情的に少しでも過剰な報道をすればかなりバッシングを受けることになるだろう。
ここが一般人のいじめによる自殺報道などとは大きくことなる点だと思う。
今回はいい意味でも悪い意味でも視聴者の反応の影響力が大きいので、少しでも際どい報道をすれば炎上待ったなしとなるのは目に見えている。
たとえば、文春のリークを挙げても結構際どいものが多い。
- 遺書の一部を公開
- 恋人との恋愛のもつれ
- 15センチしか開かなかった窓
これをテレビで掘り下げて報道すれば、たちまちネットやSNSで様々な物議を醸すことになるだろう。
特に恋愛関係のもつれであれこれ言われるのは遺族にとっては辛いことだと考えられるので、わざわざデリカシーのない報道をするのもはばかられる。
もちろん『後追い』や『遺族の心情』に配慮することも考えれば、そこを乗り越えてこの問題に踏み込むのはリスクが高いと判断するのは妥当であると言えよう。
しかし、有料のゴシップ誌はまだまだ強気だ。
強気だからこそ遺書やLINEや音声テープなども手に入れる。
⇒文春は神田沙也加の遺書やLINEをどうやって手に入れたのか?
たとえバッシングされても「だったら買わなくていいですよ」くらいのものなのだろう。
無料で垂れ流されるテレビだとそうはいかないが、お金を払って情報を得ることは『個人の意思』となってしまうからだ。
今後、芸能人の自殺は報道されない
今回、神田沙也加のニュースがテレビで報道されない理由について、3つの要因を挙げさせてもらった。
平成までのマスコミなら今回のようなニュースでも無慈悲に報道していたように思うが、これまであらゆることを暴く報道のスタンスに厭世観を抱いてきた人も多いだろう。
これは自殺念慮を抱えている人にとっては非常に危険な報道となってしまう。
それが令和に入ってからは、モラルを持って報道する姿勢へと変わりつつある。
2020年は『芸能人の連続不審死』という言葉が出てくるくらい多くの芸能人が自ら死を選ぶこととなってしまった。
普通にテレビを見る人なら知っているであろう三浦春馬、竹内結子。両者とも好感度が高い俳優女優だっただけに、その死の影響力は非常に我々が思っているよりも強い。
実際、後追い自殺は起きてしまっているし、それは今回の神田沙也加の件でも懸念されている事案だ。
同じ過ちを繰り返さないために、今、テレビによる報道を自主的に制限する動きが出てきている。
この事実は多くの人に知ってもらいたいと思う。